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人間により破壊され汚された大地……。 食物も住処も奪われたポケモン達……。 被害者はポケモンだけではない、他の植物も動物も生きていけない。 『ポケモンの住みやすい世界』を創る為立ちあがった四天王ワタル・キクコ・カンナ・シバは、その手段を『人類抹殺』とした。ポケモンを遠隔操作によりカントー総攻撃を始めた四天王を倒す為、イエロー達は四天王本拠地『スオウ島』で戦いを挑んだ。 スオウ島中央・今にもマグマが吹き上がりそうな火口で、イエローとワタルは戦っていた。イエローといっしょに戦ってくれたカツラは限界まで戦って意識を失っている。 『ポケモンの思いを読み取り、ポケモンの傷を癒せる』不思議な力を持つトレーナー・ワタル。 「糸のトラップそのものが、オレのスキを作り出すための『囮』だったとはな。作戦はよかった。……だが、哀しいかな、パワー不足だな!!」 ワタルの竜達の攻撃『見えないバブル光線』がイエローに迫る。 「うわわああ!!」 その時、イエローは誰かに抱きかかえられ直撃は逃れた。だがイエローは助けてくれた人物が誰だがわからなかった。 「だ、誰ですか?もし……ボクを助けに来て下さったのだとしたら、せっかくですけど……。ワタルはトキワのトレーナーでないと倒せないんだ」 イエローはそこまで言い、一度言葉を切った。 (トキワ出身の同じ能力を持つ者が、ワタルに対抗する事ができる……。だから……) 「ボクがなんとかしなくちゃ……」 イエローはゆっくりと立ちあがる。 「心配するな。……私もトキワのトレーナーだ」 その言葉に振り向いたイエローに、その人物は言葉を続けた。 「これ以上、兄妹で戦わすわけには行かないだろう?」
その男は、驚いたイエローの前に立ちワタルに対峙する。 (ワタルとボクが兄妹?まさか!?……この人ボクが女の子だって知っている?) 突然、ピカがその男に跳びかかろうとする。 「ピ、ピカ!ど、どうしたんだ、急に!?」 慌ててイエローはピカを押さえて意思を読み取ろうとした。ピカの記憶が断片的に伝わってくる。 (ピカは一度この人と戦っている……トキワの森で!!……こ、この人は敵なのか!?味方なのか!?) イエローはピカの記憶は読み取れたが、ピカの考えている事までは読み取れなかった。 「貴様!何のつもりだ。誰であろうと、このワタルの邪魔はさせない!『バブル光線』!」 だが男は、あっさりと『見えないバブル光線』を破り、反撃した。が、男のポケモンの攻撃は効かずワタルの激しい反撃が返って来る。戦いを見ながらイエローは考えていた。 (ワタルとボクがきょうだい?ボクに兄さんがいるなんて聞いた事はない。…でも、数年に一度トキワで生まれる『不思議な力を持つ子供』……同じ時期に二人も現れるなんて……やっぱりボクらは本当に兄妹なのか?) ワタルの竜達が放つ『破壊光線』がイエローにも襲いかかる。 「わぁ!」 慌てて逃げるイエロー。男の手も足も出ない様子にワタルは高笑いをする。そのスキに、男はボールを転がしていた。 「真下がガラ空きだ!」 男の声とともにボールの中からスピアーが飛び出す。竜達が作った大きな『泡』をバリアーとして空中から攻撃していたワタルは、真下からの攻撃に『泡』を破壊され落下した。 「おまえは……トキワジムリーダーだな」 (トキワジムリーダー!何故、そんな人がここに!?) イエローをすっかり無視して男はワタルに近づく。男の合図でスピアーがワタルの喉に毒針を突き付ける。 「な、何もそこまで……」 止めようとするイエローを制して男は言った。 「我が組織は不滅だ。今は壊滅状態だが、時期がくればやがて復活するだろう。だが今、カントーはお前達四天王による攻撃を受けている。いずれ、私が制圧するはずの場所で……勝手な事は許さん!!」 それにワタルが答える。 「さすが最強のジムリーダーだ。そこにいるガキとは迫力が違う。いや……それとも、さすがはロケット団のボスと言ったほうが敬意が表せるかな?サカキ殿!?」 「ロケット団!」 (このおじさんがロケット団のボス!?なんでそんな人がボクを助けたの?ワタルを倒したいだけならボクなんてほおっておいていいはずなのに何故?……ボクらを兄妹だと言ったこの人……。兄妹で戦わすわけにはいかないと言った……。この人はまさか!?) 「……さあ、ゲームは終りだ」 サカキはワタルにとどめを刺そうとした。が、本気でとどめを刺すつもりはなかった。彼には他の目的があった。 「やめて!……お父さん!!」 イエローが叫んだ。 「何!?」 ワタルが驚く。サカキはほんの一瞬、表情を変えたがすぐにもとの悪人顔に戻る。 「おじさんは、生き別れになっていたお父さんだね?……ボク達を兄妹だって言って、ボクを助けてくれた……。兄さんが『きょうだい殺し』にならないようにしてくれたんだね……。でも、兄さんを殺さないで!」 「何を言っているんだ!?オレとイエローがきょうだいだって!?どういう意図でそんな事を……」 ワタルはまったくそんな話を信用するつもりはないが、動揺していた。 「トキワの森で数年に一度生まれる『不思議な力を持つ子供』……同じ時期に二人も存在した事は今までにない。森が与えるその力、お前達は兄妹で分け合って生まれてきたのだ」 サカキが静かに答え、さらに言葉を続ける。 「……そんなことは私には関係のない事だ。邪魔をする者を、私は許さない!ただそれだけだ」 夜が明けようとしていたその時、大気を振るわせ海鳴りがした。どう見ても不利な状況のワタルが突然笑い出す。 「フ……ククク、ワハハハハハハ!!!」 その途端、サカキの胸元が突然輝き何かが飛び出した。トレーナーバッジだ。スキをついて溶岩の中に隠れていたカイリューが飛び出しワタルを助けた。 ワタルはトレーナーバッジをすでに七個手に入れて、島の七方に配置していた。残る一個を島の中央に置くだけでバッジは共鳴して力を発揮する……。ワタルは島全体を『バッジエネルギー増幅器』にしていたのだ。 ワタルはその説明を得意げにした後、サカキにこう言った。 「おまえはオレを追い詰めたとおもっていただろうが……逆だ、おびき出したのだ。お前をちょうど島の中央までな。そして……」 ワタルはチラッと上を見た。イエローとサカキも上を見た。そこには夜明けとともにスオウ島真上に現れる『幻のポケモン』がいた。 「まったく……とんでもない仕掛けを用意していたものだ……だか!」 身をひるがえしサカキがその場から駆け出す。 「お、お父さんっ!?」 イエローの声も届かず、サカキは姿を消した。 |
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