どんぞこ!?

  
 20世紀最後のクリスマスイブ。
 小餅は、ある大型スーパーに来ていた。そう、予約していたポケモンケーキを買うために。

 だが、店内のどこを見渡しても『ケーキ受け渡し場所』がない。

 「あれ?変だなぁ〜」

 小餅の今までの経験では、予約してあるケーキは店内の『特設ケーキ受け渡し場所』に、たくさん積まれているはず……。
 それがない!?

 仕方がないので、ケーキを注文したサービスカウンターに行って見ると……

 「12番レジの前です」

 と言われ、12番レジの所まで行って見ると……

 「……?どこ??ケーキも特設カウンターもない!?」

 レジ係の店員は忙しそうにしていて訊く事が出来ない。
 小餅は12番レジ前の通路でケーキを捜した。

 「……まさか、通路をはさんで向こうのギフトコーナーじゃないよね?」

 思いきってギフトコーナーの店員に尋ねた。

 「ここじゃないですけど……え〜と、ちょっと待って下さい」

 そう言った店員の胸には『研修中』のネームプレートが……。
 戻ってきた研修中店員いわく

 「これは、サービスカウンターです」
 「サービスカウンターで訊いたら、12番レジの前って言われたんですけど……」

 すっかり、研修中店員は困ってしまった。

 開店して間もないこのスーパー、自分の担当の仕事さえ憶え切ってない店員に、管轄外の事を訊いたのは酷だった。

 「……他の店員さんに訊いて見ます」

 小餅はその場を去った。クリスマスの買い物で混み合った店内をうろつく。

 「あ!あの人!!ポケモンケーキをもらってる!?」

 なんと、テナントの小さな和洋菓子店でポケモンケーキを売っている!!自分の頼んだケーキはここではない……わかっているが、ケーキの箱につられて和洋菓子店カウンターにはり付いた。

 予約票を見せながら訪ねる。

 「すいません、このケーキは…」
 「そこで渡してますよ」

 即座に返事が戻ってきて驚いた。
 あわてて、指差す方を振りかえる。

 『ケーキ受け渡し場所』と、A3のコピー用紙が人の頭くらいの高さで掲示してある。

 小餅は和洋菓子店店員に御礼を言い、人ごみをすり抜け受け渡し場所へ行った。

 そこは、13番レジの前(12番じゃなかったのか?)
 客が買い終わった食料品を袋に入れるためのカウンター。
 そのカウンターで、店員二人が立っている。
 その同じカウンターで、客が買ったものを袋に入れている!
 ケーキはどこにもない??

 「すいません、ケーキ買いに来たんですけど」

 店員は予約票を見ると、何も言わずに走って行った。
 もう一人の店員も、黙々と予約表と予約票を照らし合わせている。ケーキは冷蔵庫にでもあるのか??
 小餅も無言で待った。待った。待った……。

 客が小餅の横で、買い物したものを袋に入れる。そして帰る。
 また、ちがう客がカゴいっぱいの買い物をつめる。そして帰る。

 小餅以外にケーキを待っている人はいない……。不安になる。
 5分も待っただろうか、やっとケーキを持って店員が戻ってきた。

 ポケモンケーキ、ようやくゲット!!

 ……このスーパーは『ポケモンおせちセット』『ポケモンソーセージカレンダー付き』『ポケモンパンお正月セット』『ピカチュウ鏡餅』など、他のスーパーで置いてくれなかったポケモン商品を置いてくれる良い店である。

 ケーキ渡しも、手際良い店になってほしい……。


 ポケットピカチュウ白黒&カラーを『壊すかもしれない』おそれがあったので、ポケピカを三個とも腰からはずし、カバンに入れて持ち歩いたのが20世紀の終わり頃……。

 「きっと全部『どんぞこ』になってる……」

 そう思うと、こわくてスイッチを入れることが出来なかった。
 ポケピカは毎朝カバンの中からアラームを鳴らして時間を知らせてくれる。
 スイッチつけて〜と、うったえているように……。

 「よ〜し!思いきってスイッチ入れるぞ!!」

 まず、白黒から……おそるおそるスイッチを押す。

 ピッ。

 「あれ!?どんぞこじゃない!!100万歩いってるよ!?」
 「も、もう一個の白黒は……」

 ピッ。

 「これも100万歩だあー!!」

 問題はカラーだ。

 三個の中で一番カウントが増えにくいカラー。同じく腰につけても、同じく振っても、同じくカバンに入れても、カウントが全然増えないカラー……。

 そ〜と、スイッチを……。

 ピッ。

 「……モンスターボール??これがどんぞこー!!」


祝!?100万歩&どんぞこ&祝!?100万歩

 カラーのワットを見てみると……。

 「9999たまってる!」

 そう、『どんぞこ』になっても、カバンの中で揺られてワットを貯めていたのだ。

 ……ワットすべてをプレゼントしてもカラーのごきげんは『フレンドリー』にはならなかった。

 2001年啓蟄を過ぎた現在、180万歩『いいかんじ』で、白黒とともに腰についている。

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