予感

 
 ある夜、

 「小餅ーーーーー!」

 小餅は、誰かに呼ばれた。遠くから聞こえたような感じで。

 「みぃパパかな?石鹸でも、無くなったのかなぁ」

 小餅は、みぃパパが風呂場で叫んだと思った。

 風呂の前まで行く。

 ドアを開ける。

 小餅とみぃパパは、同時に、同じ言葉を言った。

 「今、呼んだ?」

 !?

 みぃパパは、小餅を呼んでいないという。

 小餅も、みぃパパを呼んでいない。

 なのに二人とも、『誰かに呼ばれた』と言う・・・。

 小餅はイヤな予感がした。

 昔の記憶が甦る。



 小餅が小学校4年のある朝、いつもの様に、遅刻ギリギリで通学路を走ったり強歩したりしていた。まわりには誰もいない。

 公園予定地の、草がボウボウの荒れた空き地、子供にとっては良い遊び場。・・・その横を走っていた時だった。

 「こぉーもち、さ〜ん!」

 と、誰かに呼ばれた。声はずっと後ろの方からだった。

 立ち止まり振り向く。だがしかし、誰もいない。

 そう、誰もいるはずが無い。この時間に小餅よりも後ろにいたら完全に遅刻だ。

 「おかしいなぁ??」

 と、思ったが、考えてると遅刻する。慌てて走る小餅。

 ところが、不思議な事は、これだけでは無かった。

 「あたしも、学校に来る時、誰かに呼ばれたよ」

 「ルミちゃんも呼ばれたの!?」

 「うん。『ル〜ミちゃぁ〜ん』って。でも、知ってる人は誰もいなかった」

 「ボクも呼ばれたよ!」

 「ええ!?モリケンも??」

 「うん。『モーリケーーン』って呼ばれた」

 「・・・誰もいなかったの?」

 「だれも呼んでないみたいだった」

 もしかしたら、まだ、他にも呼ばれた人がいたかもしれないが、確認をしたのは3人だけだった。

 気味が悪い話だ。

 そして、この直後か直前か忘れてしまったが(古い記憶なので)、ちょっとした事故があった。

 呼ばれたうちの一人、モリケンの兄弟が交通事故にあったのだ。幸い軽傷だったそうだが、3人は、あの呼ぶ声が何か関係があるのかと、気味悪がった。



 小餅はイヤな予感がした。

 「小餅家で、誰かケガをするかもしれない・・・」

 みぃパパは明日は仕事だが、明日の仕事の内容は危険なことは無い。みぃは休みだが家から出る予定は無い。

 一番、危ないのは小餅だ。

 年に一度の『PTAミニバレーボール大会』

 クラス対抗で、ゲームを通して仲良くなろうという趣旨だ。

 毎年、大会前の1週間のうち2日練習をして、筋肉痛で動けないまま予選落ちをしていた。

 今年は、1日しか練習にいっていない。しかし、予選の2試合より練習の方がたくさん動いている。だから例年通りならケガはしないはずだが・・・。不安がよぎる。

 そして、翌日。雨の中、ずいぶん濡れて学校に到着。

 諸事情で、出られないメンバーがいて人数はギリギリの6名。交代要員がいないまま予選。

 それでも、時間的には、予選の2試合は練習試合よりも少ないはず、だった。

 ところが、どっこい、今年のクラスは強い!?小餅がみんなの足を引っ張らないかと心配なくらい、みんな上手い!

 予選を通過してしまったのだ・・・。

 そして決勝リーグ。1試合目、勝ち。勝ってしまった(汗)

 小餅はこの辺で、だいぶ疲れて来た。予選であたったチームも、リーグであたったチームも強かったのでボールが落ちなくて疲れた。

 今まで、たまたま、お気楽チームで軽く予選落ちだったので、小餅にはきつかった。普段、自転車には乗って遠乗りしているが、使う筋肉が違うようだ・・・。

 試合後、線の審判?(線判?)をやってる時、くらっと来た。まずい、ちょっと具合悪いかも・・・。(教えていただきました。線審でした(汗)

 お茶を飲んで一休みして、とうとう準決勝。

 相手チームは、メチャクチャ強い!さっき、そのクラスの先生と立ち話をしたけど、バレーを指導してる人がいるとか。でも、小餅のクラスも負けていない。試合は長引きそうだ。

 そして、予兆。

 「?」

 左ふくらはぎが、ちょっとつった気がした。さすってるうちに落ちつく。

 「!!」

 今度は、完全につったような痛み!小餅はシリモチをついて動けなくなり、自主退場。試合は一時中断された。

 足首は動くし、つったような痛みだけなので、大事には至っていないとは思うが・・・立ちあがれない。

 少し時間が経ったら、立って、足を引きずって歩けるようになったが、依然つったような痛みは続いている。大事を取って病院に行くことに。

 診断は『筋肉疲労で痛くなったんでしょう(笑)』だった(汗)
 そして、軽い触診だけで湿布を貰って終わった。

 ちなみに、小餅のクラスは、1点差で準決勝を落とし、4位だったそうだ。確かに、他のベスト4チームはケタ違いに迫力があった。

 後日、誰かが言っていたが、「アキレス腱を切るのは運動やった事ある人で、素人は切らない」そうだ。

 素人の小餅は、アキレス腱を切る前に、筋肉がストライキ起こしたのか?

 そして、あの『呼ぶ声』を思い出す。

 あれは、この事を警告していたのだろうか・・・。

 ――終り――

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