笑った?

 
 ある夜、小餅は2階のみぃの部屋の布団を敷こうとしていた。
 ところが部屋は見事にぶっ散らかっている。

 「みぃ。片せや」
 「えぇ〜?片付けるの面倒くさい〜」
 「布団敷けないでしょ!」
 「・・・」

 しぶしぶと、散らかった部屋を片付けるみぃ。
 だが、しかし、遅い・・・。なかなか片付かないので、みぃのリコーダーを取り出す小餅。

 「何するの?」
 「片付くまで、遊んで良い?」
 「別に良いけど」
 「んじゃ、何吹いてほしい?」
 「ん〜。別になんでも良い」
 「なんでも良いってのが一番困るんだよ。なんでも良いなんて言うと、ホワイトストーンズ吹いちゃうよ!」

 みぃ、にやっと笑う。

 「別に良いけど」
 「・・・笑わないで片してよ」

 小餅は、おもむろにリコーダーを吹きだす。
 ホワイトストーンズのオープニングテーマ曲を間違いながら・・・。
 北海道の某ローカルテレビ局某番組内で『雅楽戦隊ホワイトストーンズ』という仮面ライダーみたいなドラマを作っている。今の仮面ライダーではない。昔の仮面ライダーみたいなドラマだ。シリアスとギャグが入り混じったドラマで、ナレーションも当時の仮面ライダーのナレーターさんに読んでもらってたりするある意味凄いドラマだ。そのテーマ曲も、いかにも「戦闘物特撮ドラマ!」な雰囲気のハードロック?だったりする。

 ピ〜ロ〜ロロ、ピ〜ロ〜ロロ、ピ〜ロ〜ロ〜ロ〜ピ〜ロロ〜♪

 「あはははは!」
 「みぃ、笑ってないで片付けて」
 「だって、可笑しい〜」

 曲を変える。挿入歌だ。これはバラードだけど歌詞が笑える。

 ピーローローロロー、ピロピロロロ〜♪

 「あはははは!!」
 「だから笑ってもいいから片付けて」
 「わかってるって、ははは」

 次の曲、ホワイトストーンズのエンディングテーマ。

 ピ〜ピロロロ〜、ピロ〜ロロ〜ロロ〜ピ〜ロロ〜♪

 みぃが、リコーダーに合わせて歌い出す。

 「あ〜ホワイトストーンズ、愛〜の戦士〜た〜ちよ〜♪」

 くすくすくす・・・。

 誰かが、どこかで笑った。
 我慢してたけど、可笑しくて我慢できなくて、つい笑っちゃったって感じの笑い・・・。

 「ん?みぃパパが笑った?」
 「みぃパパ、いるの??」
 「さっき、この部屋チョロチョロしてどっか行ったけど、隣りの部屋かな?」
 「どこだー!」

 笑いながら探すみぃ。

 「あれ?いないよ」
 「隠れてるんじゃないの?」

 小餅も探す。

 「・・・」
 「・・・」

 みぃパパがいない。

 「下、見て来る!」

 小餅は居間に走った。

 「あ、いた」
 「なした?」
 「今、上でリコーダー吹いたんだけど・・・聞いてた?」
 「テレビつけてたから聞こえてないけど」
 「笑ってない?」
 「笑ってないけど、なした?」
 「いや、笑ってないんだったら良いや」

 小餅、2階に走る。

 「みぃ、さっき誰か笑ったよね?」
 「?。聞いてないけど。みぃパパは?」
 「下にいた」
 「なんだ」
 「・・・じゃあ、誰が笑ったんだろ・・・」
 「気のせいじゃないの?あと、幽霊とか・・・」

 ・・・幽霊?うちに幽霊が来るだろうか?

 小餅は心当たりが一つだけあった。

 「・・・楽しいそうに笑ってたから、ま、良いか」

 不思議と恐くなかった。


 数日後、心当たりの方が夢に出てきた。

 見たことがない大きな家に人がたくさんいた。そこにその方が現われた。仕事の途中でお昼ご飯を食べに来たと。
 わいわいと賑やかな所で美味しそうに食事をするその人は、食後にこう言った。

 「ビール、飲みたかったなあ」

 小餅はこう言い返した。

 「何言ってるの?仕事中なんでしょ?」
 「うん。でも・・・ビール飲みたかったなあ」

 その人は、穏やかな笑顔で、また仕事に行った・・・。

 目が覚めた小餅は、そのうち、お決まりのお供え物じゃなくて、ビールやケーキやケン〇ッキーフライ〇チキンをお供えする様にしようと思った。

 たかが夢とは思えない。お彼岸前の話だった。

 ――終り――

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