深夜の峠道で

 
 みゃーすさんからいただいた恐怖体験です。

 私が若かりし頃の事です。

 その頃、ちょっと、いけない子だった私は、深夜の山奥の峠道をサーキットにみたて、友人2人と毎週明け方までバイクで競争してたのです。

 その日は、ちょっと蒸し暑いような夜でした。

 いつものファミレスで待ち合わせした私達3人は、軽く食事をした後、出発。深夜の街を抜け、やがて山道へ。

 ここまで来ると、さすがに民家もなく、対向車もないので、3台はかなりのハイスピードで、右に左に迫るカーブをクリアーしていきました。
 深夜の山道。しかも、少し霧も出ていましたが、そこは、いつも走り慣れている峠道。次のカーブが、どちらか、どれぐらいのカーブか、すでに頭に入ってる私達は、少しもスピードを落とすこともなく いつもの休憩ポイントまで競争を初めました。

 どれくらい走ったのでしょうか?
 一番後ろを走ってた私の後方から、1台のバイクが追いついてきました。はっ!と気がついた瞬間、そのバイクは私とガードレールの間をすりぬけ、前の2台をも抜き去り、どんどん離れていきます。

 「くそったれ!抜き返し たる!」

 と、アクセルを開け、前の2台を追い越し、追尾体制に入った時。

 ビビッ〜ッ!

 と、友人2台のクラクションが。

 「なんなんよ、もう!」

 と、バックミラー見ると2台のバイクは右にウインカーを出し、止まれと言いたいようす。
 しかたなく、私もウインカーを出し止まると、友人2人がバイクを降りてやって来ました。

 「なによ、どっかバイク壊れたん?」
 「ちがう。今抜いて行った奴なあ、この世の者じゃないぞ!」
 「ぎゃははは〜。んな、あほな。人間だけなら、おばけかも知れんけど、ちゃんとバイクやったやん。ナナハンで抜かれたからって言い訳見え見えやで!」
 「それがなあ、俺2台目走ってたやろ。で、後ろから抜かれた時、 あいつ、透けてたんや」
 「俺、先頭やったけど、俺抜いて、あいつ、ガードレール抜けて走っていったんや。で、俺、慌てておまえ止めたんや。あのまま追っかけたら、おまえ、あの世まで連れて行かれるかも知れんで?」
 「んな、あほなこと。みんな疲れてんちゃうん?今日は、もう帰ろか?」

 と言いつつ、私は、ぞくっ!としました。

 そういえば、あのバイクは音がしなかったし、追い抜かれた時は、私はガードレールギリギリを走っていたはずで、その間を抜けることは絶対無理のはず・・・。
 背筋に寒いものを感じ、私達は全速でいつものファミレスまで返ってきました。全員無言でコーヒーを飲み、タバコをふかしていました。
 急に、2台目を走っていた奴が言いました。

 「錯覚やったのかもなあ。人間のおばけやったら、そうやったかも知れんけど。バイクやで。金属が化けて出るか?」

 その時、1台目を走ってた奴が言いました。

 「俺、帰る時、何気なく見たら、あいつが現れたあたりで、ガードレールに花束置いてあったんや」

 私達は、2度とそこは走らなくなりました。
 また、深夜も走らなく なりました。

 子供の時に、よく、おばあちゃんに言われてたことを思い出しました。

 「早く寝なさい。夜は、おばけの世界だからねえ。おばけに連れていかれるよ」

 ・・・これは、20才ぐらいの頃。まだサーキットを知らない頃。
 とある山の峠道で、仲間と3人で体験したことです。この後、私達は、ある方と知り合い、レース界に入って行き、一般公道で飛ばさなくなりますが・・・ひょっとしたら神様が、これ以上無茶して死なないように、あんなふしぎな体験をさせたのかも知れません。

 ――終り――

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