「け」

 
 ある夜・・・午後11時過ぎ。

 みぃパパは、布団の中で雑誌を読んでいた。
 そこに小餅が現れる。

 「みぃパパ〜、明日は何時に起きるの?」
 「いつも通り」
 「ん、わかった。じゃ、おやすみ〜」
 「おやすみ〜」

 小餅は、まだ片付ける物があったので、居間に行こうとした。
 廊下に出る。

 「け」

 

 何か聞こえた。みぃはぐっすり寝ている・・・。子供や女の子の声ではないから、みぃの寝言ではない。
 今、家にいるのは、三人だけ・・・。

 「なに?なんか言った?みぃパパ」
 「・・・なんにも言ってないけど」
 「今、『け』って言わなかった?」
 「けっ?」
 「いや、そういう怒った言い方じゃなくて・・・「毛」みたいな言い方で・・・」
 「なにも言ってないけど」
 「そうかい?・・・じゃ、まあいいや。おやすみ〜」
 「おやすみ・・・」

 そして次の日の夜・・・。

 「小餅、昨日さ、なんか言ったかい?って訊いたよね」
 「やっぱりなんか言ったの?」
 「いや、言ってないけど・・・声なら聞こえた」
 「『け』って聞こえたの?」
 「いや・・・それがさ、いつもなら、外から聞こえるとか、玄関から聞こえる、って解かるんだけど、どこから聞こえたか解からなかった」

 みぃパパは、もったいぶって、なかなか話さない。

 「だから、何が聞こえたの?」
 「人の声」
 「知ってる人の声?」
 「いや、知らない声」
 「なんて聞こえたの?」

 みぃパパが、ボソッと言った。

 「このへんにしておいてやろうか」

 こ、このへんって・・・どの辺?(汗)
 たまに、みぃパパは、見えないモノ見えなくてもいいモノが見えるらしい。・・・聞こえないモノが聞こえたのだろうか(汗)

 「外でケンカでもしてたのかなあ。『けっ!このへんにしておいてやろうか!』って」
 「ケンカなら良いけど・・・変なものだったらイヤだなあ(汗)」
 「まあ、知らない声だから、関係ないんじゃないか?」
 「そうかい?」

 いったい、その声は、なんだったのだろうか・・・。
 通りすがりの声だったことを祈る。

 ――終り――

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