一寸先は・・・

 
 今から10年以上前のことである。
 ショウコは社用で銀行に来ていた。
 彼女は銀行での支払い等を終え、外へ出た。

 「このへんってこんな店あった?」

 いつもの彼女なら、車を停めている所まで小走りで戻るのに、その日に限っては、いつもと違った。

 仕事中である。早く会社に戻らなくてはならない。

 なのに彼女は周りの風景に気を取られ、余所見をしたまま、ついに立ち止まってしまった。

 別にめずらしい風景があった訳ではない。
 ごく当たり前の良くある風景の道だ。

 だが、彼女が立ち止まった直後

 ガシャーン!!

 何かが落ちたような音に驚いてショウコは音がした方を見た。

 「看板?壁の一部??」

 ショウコの前方、1・2メートル先に、瓦礫のような物が落ちている。どう見ても一辺が50センチ以上はありそうだ。

 「うそ・・・」

 ショウコは慌ててそこから反対側の歩道に渡った。
 停めてある車とは反対側の道だったがそうせずにはいられなかった。

 そう、古いビルから落ちてきた瓦礫は、ショウコがいつもの様に小走りで通りすぎようとしていたら、間違いなく彼女の上に落ちていただろうから・・・。

 彼女が何かに誘われたのか、それとも、何かに守られていたのかは未だに不明である。

――終り――

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