足音

 ユキエが高校の時の話である。かなり昔の事だ。
 放課後、彼女は部室に一人でいた。他の部員達は隣の教室で、入ったばかりのパソコンで遊んでいた。だが彼女は作りかけの物を終らせる為に一人で古い機械を操作していた。

 コツコツコツコツ……。
 ふいに足音が左側から聞こえた。

 「変なの……左って窓なのに。廊下の音が響いているのかな?」

 ここは四階で左側は窓。窓の下は地面まで何もない。右側は廊下。足音はだんだん近づいて来るようだ。すぐ傍で音が止まった気がした。ドアの窓を見たが誰もいない。

 「廊下をはさんで向かい側の教室に入ったのかな?」

 ユキエはちょっと気になってドアを開けた。

 「あれ?」

 廊下には誰もいないし、向かいの教室もドアが閉まっていて人もいない。

 「と、隣の教室の足音かな〜」

 ユキエは廊下に出て隣の教室に入った。

 「ねえ、さっき誰か部室のほうに歩いてこなかった?」
 「行ってないよ〜」

 部員達は夢中になってディスプレイに見入っている。本当に誰も席を立っていないようだ。
 あの足音はいったい何?悪寒が背中を走る。それでもユキエは気丈にも部室に戻り、急いで作業を進め、部室奥のコンピューター室で仕上げをした。心なしかその部屋もひんやりと感じる。

 何事もなくすべて終りユキエはホッとした。


 後日、ユキエは引退した先輩に足音の話をした。その先輩は霊感のある人で、時々怖い話をしてくれる先輩だ。
 ……学校の立ち入り出来ない屋上に人影を見つけたがふっと消えた。……自分の家の屋根裏で藁人形が発見された。●年▲組には首吊り自殺の跡が残っている等々である。

 「……って事があったんですよ〜。先輩〜」
 「よく一人であの部室にいたね〜。私、あの部室気持ち悪くて一人でいられないよ」
 「え?」
 「特にコンピューター室は何か感じる……。温度が違うもの」
 「そんなの聞いてないですよ〜」
 「言ってなかったかな?(笑)」

 ユキエは再び悪寒を感じた。そして一人では部室に入らないと心に決めたのだった。

――終り――

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